銀兎文庫::novels1
じきに夏至の瞬間が訪れる。
眠り続けていた薄い目蓋が開く時間が訪れる。
満天の星の海に輝く蠍の尻尾よりも赤い瞳が開くその様は、シンジが知るどんな赤よりも魅惑的だ。
睫が震えた、と思った時、赤がゆっくりと顕われた。
「おかえり、カヲル君」
まだ少し眠そうな眼が、微笑みに変わる。
「 ―― ただいま」
そして僕の毎日は、俄然賑やかになる。
半年振りの二人の食卓、半年振りの会話。
呼べば返る声も、触れれば微笑む瞳も、触れてくる指も、全てが僕を高揚させる。
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ginto-bunko