銀兎文庫::novels1
6月の下旬から、夏と秋を越えて冬に至るまでの半年間が僕らに許された時間だから、僕らにとって、「時間」は普通の人の半分しかない。
その半分の夏至から冬至の間にカヲル君の誕生日があることを、僕はとてもラッキーだったと思っているけれど、カヲル君はとても残念がる。
「また今年も僕だけがお祝いしてもらうなんて。僕だって君におめでとうっていいたいのに」
僕の誕生日は夏至よりも半月も早いから、彼が僕の誕生日に眼をさますことはなかった。
「いいよ、そんなのは」
時間が半分になったこと、それは僕が望んだことの代償なのだから、それについて僕が文句をいうのは筋が違う。けれど、僕がそういうとカヲル君はちょっとムキになって言い返す。
「ちっとも、よくなんてないよ? 僕だってシンジ君の誕生日を祝う権利があると思うけどな」
その言い方がなんだか駄々っ子みたいで、それが意外な僕はちょっと笑ってしまう。僕なんかが彼を可愛いと思うなんて、本当の本当に僭越だなぁと思うんだけど。でも、やっぱりそういうのは「可愛い」としか表現できなくて。
君を得られるなら、もうほかに望みはないと思ったのに。
もっと、色んな君を見せてほしいと、どんどん僕は欲深くなる。我がままになる。
「ああ、失敗したなぁ。春分から秋分まで起きているのだったら、どっちの誕生日も二人で一緒に祝えたのに…」
心底残念そうに呟かれて、思わず僕は吹き出した。
だって、君は世界を支えているのにさ。
僕の誕生日なんかと世界の維持を秤にかけてしまうんだから。
僕が「可愛い」としか表現できなくても、きっとそれは僕のボキャブラリーの足りなさのせいじゃないと思う。
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