すいみつとう ( 1 )

毎日暑くてダルくて、大人はこういう時でも毎日仕事にいかなきゃならないんだから大変だなー。
夏休みの小学生だって毎日完全に暇ってわけじゃないけど、大人は生活がかかってるし。
1時頃にくる待ち人のために麦茶やおしぼりを冷やしたりとおもてなしの準備をしながら、亘は窓の外のすべての色を漂白するような強い日差しを眺めた。
「うわぁ…凄く暑そう…美鶴、大丈夫かな」
真夏になってもあまり焼けない美鶴は、夏生まれなのに暑さに弱い。お兄ちゃんらしく妹の前ではだらしないところなど見せないが、兄妹そろって日焼けしない白い肌は、今日みたいな真夏日には日に晒すのが気の毒なくらいだ。
今朝のテレビでも、午前中から30度を上回ると繰り返していたし、日中の予想最高気温は36度だという。美鶴のマンションから亘のマンションまでそう長い距離ではないが、一番暑い時間帯に外を歩かせることになるのが申しわけなかった。


7月過ぎという、ある意味微妙な時期にきた転校生は、幻界で別れたままになっていた美鶴だった。
幻界に行く前の美鶴と戻ってきた美鶴では、亘との時間に丸まる3年の差がある。美鶴は事件のあった日へと戻り亘は母親が倒れた直後に戻ったからだが、再会までの3年の間、独りでずっと抱えていた記憶の矛盾やオーバーラップや違和感を他人と共有できることへの安堵は、美鶴の方が大きかったかもしれない。
クラスメイトでもまだ宮原以外にはろくに会話もなく、宮原以外に話しかけられてもろくに相槌も打たないような美鶴が、授業合間の10分休みごとに顔を出す勢いの亘に対しては態度が幾分柔らかい。口では「また来たのか」などといいながら決して亘を追い返したりはしないのだ。
しかも、亘との会話では美鶴が笑うことさえある。いや、転校生が笑っても何もおかしくないが、転入の挨拶でもにこりともしなかった芦川美鶴が声を上げて笑うというのは、誰の目にも明らかに例外だった。

謎めいた美少年の転校生には転入した2組はおろか学年中が興味津々だったのだが──あまりの取り付く島のなさから早々に興味本位の当たって砕けろ的人波は引いて、今は機会を伺うような一種不可侵協定的な静けさが訪れていた。
そんな美鶴がなぜか亘には最初から打ち解けているらしい様子を見て、首をひねりつつも二人が親友であると公認されて今に至る。


そして訪れた、やり直しの夏休み。
基本的に前向きな亘は、学校や塾に縛られない時間をこのタイミングで持てた事に、改めて女神様に感謝していた。
なぜやり直しなのか、その秘密はたった一人美鶴以外とは共有できないし、幻界に関わる記憶はいつかは忘れていくのだろうけれど、あの旅で得た思いは絶対に消えない。
実際には亘は幻界で美鶴とずっと共にいた訳ではない。むしろ接点だけが数度あり、最後の最後で2本の線がより合わさったに過ぎなかった。けれど、亘にとって幻界の旅は美鶴とは切り離せない。
「運命が変わる」
その言葉を告げたのも、幻界で危ないところを助けてくれたのも、願いのためなら何でもしていいのだろうか、その疑問のきっかけさえも、与えてくれたのは美鶴だったから。
運命は変わった。
美鶴がいなければ、亘が今こんなふうに強くなれたか判らない。

もっともっと美鶴と仲良くなりたかったし、たくさん話をしてたくさん笑って、思いつく限りのいろんな事を美鶴と一緒にやっていくんだ。
そのための時間はいくらあっても足りない気がしている。
宿題なんか早く片付けて、その後は思い切り楽しもう。
時間はいくらあったって足りないんだから。

そう決意している亘が美鶴に二人で宿題をやることを提案して、それは一定の条件の下に承認された。
そのため、夏休みに入って以来、亘と美鶴は毎日のように互いの家を行き来していた。美鶴の妹のアヤが一緒になる時は必ず美鶴の家だったけれど(条件の1つ)、今日は午前中から友達の家でお誕生会に参加しているので、美鶴が亘の家に来て勉強することになっている。

*****

約束の1時に、美鶴はやってきた。外がよほど暑かったのか肌がうっすら汗ばんでいて、いつもは白い頬が熱気に炙られて上気していた。
「…暑い…死にそう…」
玄関でぼそっと呟かれた口調は予想以上に弱々しく、亘はあわてて美鶴を家に上げた。
「和室、クーラー効いてるからっ」
「…わかった…」

今は客間に使ってる和室には大きめの座卓があるしクーラーもついているので、二人で勉強する時はもっぱらこの部屋を使う。
勉強の前に冷たくしたおしぼりと麦茶を出すと、美鶴は砂漠が水を吸う時みたいな勢いで麦茶を飲み干した。一息ついたところにすかさず冷たいおしぼりを手渡すと、気持ち良さそうに汗を拭いて「亘って結構気が利くんだな」といって微笑んだ。
普段、他人に干渉されることを嫌う美鶴は滅多に笑わないけれど、亘と居る時だけは違って、こうして嬉しそうな顔や笑顔を見せてくれる。
美鶴が笑うと、亘もとても嬉しくなるのだ。
「あ、麦茶入れ直してくるっ」
ほとんど空になったグラスと用済みになったおしぼりを受け取ると、亘はキッチンに引き返した。
(気が利くんだな、だって)
美鶴の言葉を反芻すると、口元が緩むのを止められない。
そりゃぁそうでしょう。きっと、美鶴が想像する以上に僕は美鶴を大事に思ってるもの。
口にはださないけれど、それは再会して以来の亘の本心だ。
けれど、それを美鶴にそういう風に言われると、ちょっと照れくさい。


二人で真剣にやれば勉強ははかどるものだ。判らないところを美鶴に教えてもらいながらだったけれど、信じられないくらい課題のページが進んだ。
答えだけを聞いたりせずに自分で考えます(条件その2)と約束して頑張ってきたのがここにきて効いているのか、苦手だった算数も判るようになってきて、量を単純に日数で割った1日のノルマの倍をこなす事もそれほど苦痛ではなくなっていた。
美鶴が「今日はここまでな」と丸をつけたページまでの問題を解き終えて、ふと気づくと時計は3時をすぎていた。2時間ほど休みなしに取り組んでいたことになる。テーブルの上の飲み物のグラスも2つとも空っぽだった。
「そろそろ休憩しない? 僕、お茶入れてくるね」
「ん、ありがとな」
勉強の中休みにとキッチンに飲み物を取りに行った亘が部屋に戻ってきたとき、お盆には麦茶のグラスと一緒に、今まさに旬であるほんのりと色づいた白桃が2つ載せられていた。

「美鶴、桃食べる?」
「わ、どうしたんだ、これ?」
差し出された見事なくらいの大きな白い桃を受け取りながら美鶴が聞く。 細かな産毛がベルベットみたいな皮に包まれた果実はよく熟していて、そっと触らないと指が沈み込んでしまいそうに柔らかい。
「ルゥ叔父さんがね、仕事のことで岡山に行っててそこから送ってくれたんだ」
卓に皿とおしぼりを置きながら、僕もお母さんも桃が好きなの覚えてくれててさ、と説明する。
「父方の伯父さんだよな? ライフセーバーの?」
再会後に互いの家庭環境はあらかた話してあるから、美鶴はすぐに思いあたったようだった。
「そうだよ。でも2箱もあるから、いくら好きでも僕とお母さんだけじゃ食べきれないし…桃って傷みやすいから、美味しい時に食べちゃわないともったいないでしょ?」
美鶴が来るから一番甘そうで大きいの選んでおいたんだよと亘が笑うと、サンキュ、と美鶴も笑う。

「俺、果物なら桃が一番好きなんだ。すっごい嬉しー」
「あ、美鶴もそうなんだ? じゃぁちょうどよかった!」
なんだかえらく嬉しそうに見える美鶴に、桃を渡した亘もつられて嬉しくなってくる。
「うん。味も凄く好きなんだけどさ…」
食べごろに熟した桃を柔らかく両手で包んで目蓋を伏せると、美鶴はすうっとその甘い芳香を吸い込む。
「生の桃の香りって、なんだかそれだけで幸せな気分にならないか?」
これが芳香剤の匂いじゃこんなに幸せな気分にはなれないんだけどな、と、美鶴は伏せていた目蓋を薄く開いて、上目がちに微笑った。珍しく「幸せ」なんて単語を使って照れくさいのか口元は大きな桃に隠されたままだったが、その表情はどこかうっとりとしたものを含んで瞳が潤んで見え、亘は思わず目を釘付けにされる。
どっきん。
(美鶴ってきれい)
芦川美鶴は誰に聞いたって美少年だといわれる顔をしている。そんなことは亘にだって判ってるし、常々綺麗な顔だと思っていた。けれども、今思ったきれいは、普段感じている綺麗とはなんだかちょっとだけ違う気がする。
やっかいなことに、心臓までがどきどきと落ち着かない。
(わ、わわっ…どうしよ…)
普段は小学生に見えないほどクールで口数の少ない美鶴が、亘の前ではこうやって素直な一面を見せる事がある。まだ頻繁ではないもののそれだけに免疫がつきにくく、しかもたいていはこんなふうに不意打ちなので、亘はそんな美鶴の隠された素顔にとてもとても弱かった。
「とてもとても」がどのくらい「とても」なのかというと、もしヴィジョンでこんな顔して「俺はどうしても願いを叶えたいんだ」って囁かれてたら、きっと美鶴を止めるどころかいそいそと協力してしまっただろうくらい。
…だめな勇者でごめんなさい。

たっぷり十秒は見蕩れてしまっていた亘の反応に、子供っぽいと呆れられたとでも思ったのか、美鶴はちょっぴり頬を上気させると上目遣いのまま軽く睨むようにして問うてきた。
「な、亘だってそう思わないか?」
目の前には、美鶴の両頬と口元の実物とで、まるで3つの白桃があるように見え(これって幻覚魔法?)、亘はなかば無意識でカクカクと頷く。
「そっ、そうだね!」
「だろ?」
同意を得て、へへ、と満足そうに笑む美鶴は、彼がいうように本当に幸せな気分になっているらしく、普段の皮肉っぽさや毒舌からは信じられないほど屈託がない。
(──か、かわいい…)
亘は、美鶴のやることなすことにいちいち弱い。
こくり。
亘は口の中にたまった唾を気づかれないようにこっそりと飲み込んだ。


「ところで、これ、このまま指で皮剥いて食べちゃっていいのか?」
渡された桃は皮のままの丸ごと1個で、お盆に載っているのもおしぼりであることに気がついた美鶴が、机に軽く身を乗り出してきた。
「え? あ、…あーっと、ルゥ伯父さんから来てた手紙に『まるごとかぶりつくと美味いぞ!』って書いてあったから…」
普段から、美鶴はどんなものでも食べ方が綺麗だった。亘の家もお行儀にはうるさいけれど、美鶴自身も基本的な躾がきちっとしてる。なんとなく、桃にかぶりつく美鶴って可愛いかもと想像したら実際に見てみたくなっちゃったのだけれど、もしかしてそれでは美鶴には食べにくいのかもしれない。

「食べにくかったら切ってこようか?」と亘がいうと「なんで? せっかくだし、伯父さんお薦めの食べ方でいいだろ?」と返して、待ちきれないらしい美鶴がいそいそとおしぼりで手を拭きだした。
いつもなら精神的なブレーキを引く原因になるアヤもいないせいか嬉しそうな笑顔が年齢よりも小さな子供みたいで、これから好物の桃にかぶりつく気満々って様子が──
(今日の美鶴って、いちいちかわいすぎ…!)
桃一つでこんなに喜ぶとは思ってなかっただけに、予想外の可愛らしさだ。でも、単に可愛いというだけでなく…
(どうしよう、見てるとむずむずする…なんかこういうのって、)
白くて、でもほんのりピンク色になってて、瑞々しい。
(そうだ…エロかわいい、っていうんだっけ…)
人気のあるらしい歌手がTVでそう言われてたけれど、その時は全く意味が分からなかった。けれど、美鶴の様子を見ていると違和感なく納得できてしまうし、岡山から送られてきた桃の箱に書かれていた品種名を思い出し、亘は目の前の美鶴にもぴったりだと思ってしまう。

(でもなんか…僕ちょっと…早まった気がするのは、なんで…?)
何を早まったのかは亘自身にももやもやとしてよく判らないまま。
その疑問の答えは、ばくばくしっぱなしの心臓が言葉をしゃべれたなら正確に答えられたのかもしれないが、あいにく亘の心臓は至って普通の心臓で、答えは自分の脳みそで出すしかないようだ。
けれど、まだ小学5年生の亘には、言葉で答えを導きだすための絶対的な情報量が足りていなかった。


「枝の方からじゃなくて、こっちの先の方からだと綺麗に剥けるぞ」
完熟した桃は、皮をつまんですこしひっぱればするりと剥けるけれど、桃の皮には繊維の方向があるので、その時に枝についていた方からではなく果実の天辺の方から剥かないと皮に果肉が残ってまう。逆剥きにして味に変わりがでるわけではないが、見た目の美味しそうさ加減には大影響だ。
百聞は一見にしかず、と美鶴が試しに少しやってみせると、つるりと薄桃色の皮が剥け、その下の果肉が綺麗なまま現れる。
ホラな?と微笑む美鶴は見た事がないくらいにご機嫌だ。

しかし、続けて皮を剥く途中で、熟した果実から芳醇な果汁がつうっと美鶴の細い手首に伝った。
「わ、凄いな、どんどん蜜があふれてくる…」
魂を吸い寄せられたように美鶴を見つめていた亘の胸で、どきん、と強く鼓動が叩く。
(な、なんか、台詞がエロいよ美鶴…。)
桃を持った手ごと上に持ち上げて、「もったいない」と美鶴は無造作に手首に流れた甘い果汁をぺろりと舐める。
細くて白い手首をピンク色の舌が這うその光景に、頭のどこかを真っ白に焼かれた気がした。
(うわぁっ、仕草もエロいよ、みつるぅ!)
「…あま…」
眇めた目を輝かせて満足げに呟く美鶴の姿に、指の跡がつくのも忘れて思わず桃を持つ手に力が入るのをとめられなかった。部屋いっぱいに立ち上る香りを、まるで美鶴自身が漂わせてるような気がしてくる。
(なんか…もうホントに食べちゃいたいっ…!)
顔がひどく熱く感じるのは、きっと真っ赤になっているせいに違いない。

熱心に手を動かして皮を剥き終えた美鶴は、一応用意したデザートナイフも使わずに、かぷりと桃にかぶりついた。
くちゅ、と濡れた音がして、果肉を口に含んだ美鶴が顔をはなすと、美鶴を中心に部屋にはいっそう甘い匂いが立ちこめた。あごの方にまで果汁の流れた後が筋になっている。無意識にあごを拭う白い手がひらりと動くたびに「幸せな気分」の香りが亘の方へと何度も漂ってくる。もう一口、そしてもう一口。亘はもうその光景に釘付けになっていた。

3口ほど食べ進んだところで、顔を赤くしたままの亘にじっと見つめられている事に気づいたらしい。
「ん?」
どうかしたか?と目線で問うてくる美鶴の口元に吸い寄せられる視線。
果汁に濡れた唇が艶かしく光って、亘を誘っているかのよう。その視覚効果だけで、亘は桃を手にしたまま返事もできずに再び固まってしまった。
「なんだよ亘、全然食べてないじゃないか。すごく美味しいのに」
(ええっと。確かにすごく美味しそうなんだけど。)
「お前の伯父さんのお薦めの食べ方、ちょっと行儀悪いかもしれないけど、ほんとに美味いぞ?」
(丸ごとかぶりつきたい気持ちは僕も同じなんだけど。)
「…おい、顔が赤いぞ? 外気温が高いと部屋の中でも熱中症になったりするっていうし、麦茶飲めよ」
(熱中症…そうかも。でも原因は気温じゃないと思う。)

「──わたる?」
返事もしないで(いや、心の中ではむしろ逐一返していたのだが)固まったままの亘に、普段お兄ちゃん行動が基本の美鶴は本気で心配になったらしい。手にしていた食べかけの桃を皿に置きおしぼりで手を拭くと、亘の方に回り込んできてそばに座り込む。
ぺた、とあまい匂いが染みた手のひらが亘の額に置かれた。冷やした桃を持っていたせいか、普段よりさらにひんやりしている温度が火照った肌に気持ちいい。けれど、甘い匂いがするせいで亘の顔にはさらに血が上った。そのせいか美鶴は逆に熱があると感じたようで、心配そうに覗き込んでくる。
「う…ん、ちょっと熱いかな。ほら、お茶飲めるか?」
声が囁くような感じになって、トーンが少し低い。亘の分のグラスを持ち上げると、表面の水滴をさっとおしぼりでぬぐってから桃と交換で手に握らせる。それはなんだかやけに手慣れた感じがして、亘にもまだあまり向けられることが少ない美鶴の一面を感じさせた。

そう、美鶴は本当はとても優しい。向けられている対象がごく限られているだけで。
自分にだってそれを向けてはくれているのは判っているけれど、それは普段大半が美鶴の妹であるアヤに注がれているのも判っている。妹のためにすべてを賭けて幻界へと行った美鶴なんだから、亘だってそれを当たり前の事なのだと思いはするけれど…
アヤちゃんも具合が悪い時には…ううん、自分がいない家の中では普段からこんな風に甲斐甲斐しく世話を焼かれているんだろうか。そう思うと、
(…うらやましい…)
そんな、黒い気持ちで一杯になる。その「うらやましい」は、ずるい、と置き換えても大差ない意味で…要するにアヤに対する嫉妬だった。アヤだって大事な亘の友達だというのに。けれど、美鶴への思いは、密度も強さも何もかもが桁違いに大きい。美鶴への好きは四六時中独占したい気持ちを含んだ好きで、アヤだけでなく同居してる美人で優しい伯母さんだって本当は嫉妬の対象なのだ。

「な? 少しずつでもいいから飲めよ、亘」
本気で心配してる美鶴が、グラスを持つ手にそっと自分の手を添えて亘に飲むようにさとす。決して無理強いではない程良い力に逆らわずに口を付けると、氷が少し融けかけた麦茶は冷たくて、渇ききってるのどを潤してくれた。けれど、胸がつかえて一口二口しかのどを通らない。
それでも亘が反応を見せた事に少し安堵したのか、覗き込んでいた美鶴の表情が少しだけ緩んだ。濡れた唇から、ほ、と小さく安堵のため息がもれ、甘い香りがまともに亘の鼻腔をくすぐった。
(うわっ)
目の前がチカッとしたくらい、それにはマジでくらっと来た。ただでさえ普段から綺麗なのに、いきなり可愛かったりしかもエロ可愛かったり、美鶴は自分の魅力に無頓着すぎる!

マジックアローで心臓を突き通された気分で、火照った体が奥の方からむずむずとしてくる。なんだかもう、亘にはこの場面で素直になればいいのか自棄になればいいのか、それすらよく判らなかった。
とにかく、美鶴だ。美鶴がいけないんだ。美鶴がこんなにいい匂いをまき散らしてるのがいけないんだ!
亘はもう、そうとしか考える事ができなくなっていた。


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