銀兎文庫::novels1
言葉を捜してみたんだ。
何か適当なことばじゃなく、何か適切な言葉を。
けれど、ごめんよ。
適切な言葉はおろか、適当な言葉さえ、思い浮かばなかったんだ。
星が溶けゆく明け方
はじめから仕組まれた時間の中で、曖昧なカウントダウンは続いていた。ずっと。
きっと、最初にアダムが人の手で目覚めさせられた、その時から。
それを停める必要性など、ついぞ感じたことなどないのに、僕は、今になってそれを愚かにも思い悩んだ。
もう少し早ければ。
あと少し何か違えば。
たった少し何かを違えば。
きっと僕は。
君にとっては酷い言葉しか残せない。
きみの肌の上に引き攣れた傷跡のようにしか。
残せない。
思い惑う思考は漣のように震えるのに、未明の湖面は凪の時間で、水面は滑らかな氷のよう。
この真夏しかない世界で、僕は冬の寒さを体感する。
凍てついた状況と、置き去りにしてきた箱庭と。
僕がこれから壊そうとしているこの世界と。
だからせめて、何か適切な言葉をと。思ったのだけれど。
――なぜだろう、今になるとそれは、君に対する冒涜のように思えてならないんだ。
謝罪の言葉など、君を貶める言葉にしか思えないんだ。
長い長い時間の中で、きっと君は僕の輪郭を忘れていく。
交わした言葉や、混ぜたまなざし、互いに感じた時の流れ。
それらは温い液体に投げ込まれた氷のように輪郭を緩ませて、そして滑らかに崩れていく。
この、凍てついた朝を溶かすものは何。
それは少なくとも、登ろうとしてる太陽ではなく。
僕は人とは違う生き物で。
君はあまりにも生き物としての人そのもので。
例え形は似ていても、交われるのはほんの一瞬で。
けれど、本当は遠く離れた平行線であったはずのものだから、交点ができたことすら奇跡のようなものなんだ。
そして交わった線は、そこからまた離れていく。
どちらかを歪めない限り、添うことなどありえない。
(あるいは両方を?)
君に誠実であろうとすればするほど、僕らの線は離れていく。
僕に誠実であろうとすればするほど、僕らの線は離れていく。
(でも、それでいいんだよ。)
見上げた視界に映る、黒いモノリスたち。
彼らの引く線の上を歩くことに、何の価値も抵抗も覚えなかった。
それはすべて単なる通過点でしかなく、僕にとっては到達すべき極点のみが際立っていて、そこまでのルートなど、何の興味もなかった。
けれど、今は。
僕が僕の後ろに無自覚に残してきた軌跡を、今になって1つだけ、悔やんでいる。
僕はこの形になるべきではなかったのだ、と。
…後悔とは少し違う。
懺悔などするつもりもない。
ただ、君の前に、僕の真実の姿で挑むべきだったと。
その思いだけがパルスのように瞬いている。
星がさらなる光に溶けて、天球は宙の高みを隠そうとしている。
そこに星があることなど、何億年も前から夜毎に暴かれているのに。
求める極点は、今にも隠そうとされているあの先にこそあると、歪められた形を作るこの細胞でさえ叫んでいた。
曖昧なカウントダウン。
君の父親は針を進めようとしているね。
僕も同じかもしれない。
けれど、僕が進めるのは僕の極点のための針だ。
交点を、あるべきところまでへと離すための針だ。
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えー、すいません。なんかもうゴメンとしかいいようがない気がする。
今度は「短くー」の呪文が効きすぎて、わけわからんさ杉かもしれないー。
でも、私の中で庵野カヲルって確実にこういう要素持ってるのですよね。
人外であるということは、必ずしも人に迎合するとは限らないという。
さ、賛同者がいてくれると嬉しいんですが… |д゚)コソーリ
ginto-bunko