銀兎文庫::brave
確か、5度目か6度目に美鶴と最後までした後だったと思う。
まだ慣れてない情事の後は、高まり切った緊張が抜けるのか互いに気を失うように眠り込んでしまうのが常だった。眠っているのはそう長い時間ではなかったけれど、そこからボンヤリと意識が浮上して、眠ってるような起きてるような、曖昧な感覚に浸るのが僕は好きで。
「──前から聞こうと思ってたんだけど…」
腕の中の体は身動き一つしなかったから、まだ眠ってるとばかり思ってたら、ふいにどうにでもとれるような口調で美鶴がつぶやいた。
「お前さ…こんなまったいらで柔らかくもない胸なんか触って愉しいのか?」
僕らはこんなふうに裸になって色々する間柄にはなってたけれど、まだ美鶴の方が背が高かった。でも全体的に骨の細い身体は僕の身体より少し細くて、今みたいに背中から両腕を回して抱え込むと、自然と心臓のあるあたりに僕の掌があたった。
美鶴が言うには、僕はいつも胸を触ったり撫でたりしてるらしい。
え、そんないつも触ってるかなと、指摘されるまでそこまで明確な自覚がなかった僕に、
「…今もだろ。それに、」
してる最中だって、と、呟いた声が少しかすれて、その不意打ちの妖艶さに、彼の細い指で首筋をさわりと逆撫でられたような気がした。
いつもなら透明な水のような美鶴の綺麗な声がかすれているのは、眠り込む前に僕が彼を揺すぶり続けたせいで──最初は「やだ」とか何だとか否定の言葉混じりで始まった声が、次第にまるで子供の上げる泣き声のようになって、最後はとぎれとぎれになっていく、その無防備さに僕がすっかり溺れていたからで。
「愉しいっていうか…」
もちろん、恋人である美鶴に触るのは他の何を触るよりも何万倍も楽しいし、しっとりと手触りの良い肌理のつんだ肌は触れたり撫でたりするとそれだけで気持ちいい。愉しいかと問われれば、愉しくないわけなどなかった。小さく色づく両の乳首は美鶴の弱点の一つだということもとっくに覚えてるし、そこを弄るだけでびくんと波打つ体は凄まじいほどの誘惑だった。
でも、それだけじゃなく。
手のひらを一杯に広げて隙間がないほどぴったりと美鶴の肌に添わせると伝わってくる振動。
それが、たまらない。
美鶴の鼓動が。
普段はとくとくと控えめに伝わってくるそれは美鶴が生きているという証拠で、僕の隣にいるという証拠で、肌を重ねている時にどきどきと同じテンションで加速するのは僕らが同じ時を共有しているという証拠だった。
なくしたと思ってたこのちいさな音。
健気に打ち続けるこのうえなく大切な、音。
手のひらに感じるだけで泣きたくなるほど愛しい、だから、美鶴にあえて指摘されてしまうほど、無意識に求めてしまっているのだと思う。
「…たのしいっていうか、それもひっくるめて、うれしいっていうか」
美鶴の少し汗ばんだ胸に手のひらを合わせたまま僕が正直にいうと、それをどう受け止めたのか美鶴は吐息をつくように笑って、「…やらしい奴」とからかうような声が続いた。
「ひどい」
今、僕は本当に正直に答えたのに。
美鶴はいつだってこんなふうに素直じゃない。それは最初は彼が他人の中で生きることを強いられているうちに身に付いた条件反射のようなものだったのだと思う。それが性格形成期に当たってたせいなのかそれとも条件反射も積み重なれば癖になるのか、結局美鶴にはできないことをできないといえないような強がりが根付いてしまったのだろう。習い性というやつだ。でも、頭のいい美鶴は無意識にいろんなことを考え過ぎて、余計に本音を言えなくなってるふしがあった。しかもそれを認めたがらない。
ふいに美鶴がふぁ、とあくびをした。まだ眠いらしい。
「…眠い?」
そう直球に聞くと、「…べつに…」と曖昧な返事が返る。本当はまだ眠いくせに、指摘されると素直に認められないのが美鶴だった。
相変わらず意地っ張りだなぁ、でもそんなところも可愛くてたまんないけど、と我ながら呆れてるんだかやに下がってるだかよく判らないことを考えていると、んん、と美鶴が布団にくるまるような仕草でもぞもぞと腕の中にうずくまってくる。べつに、と言った側から睡魔に負けかけているらしい。意識がはっきりしない時の方がよほど素直だ。美鶴の可愛さは大きく分けて二通りある。意地をはったりする時の可愛さと、今みたいに無意識に振りまいてる可愛さと。しかも、無意識の方はこういう時にこそ遺憾なく発揮されて僕の体温を簡単に押し上げる。僕は後ろから抱き込んだ寝乱れた柔らかな髪にくちづけ、少々よからぬことを企んでみた。
「ね…美鶴」
「…んー…」
半分寝息のような反応に、密かに笑む。
「美鶴は、どうなの」
わざとぼかした質問をすれば、眠たげに無防備な口調で「何がだよ」と返ってくる。
予想通りの展開に、今度は手のひらを美鶴の胸に密着させて、耳元にはっきりと吹き込んだ。
「僕にさわられるの、気持ちいい?」
「──!」
美鶴がどんなに意地っ張りで照れ屋で恥ずかしがりでうそつきでもわからずやでも、鼓動は正直だ。
ところどころに赤い跡の散った白い肌にぴったり合わせた僕の掌の下、彼の体の中心でどっくんと大きく飛び跳ねた鼓動は、『気持ちいい』と口に出されたも同然だった。しかも跳ねた鼓動はペースを上げたままで。
(…えへへ)
思わずにやついたら、笑った気配を悟ったのか、瞬時に美鶴の耳までが赤くなった。
「…っ! お前、ムカつくっ」
じたばたと暴れだす身体を、後ろから押さえ込む。美鶴が本気で暴れたら、まだ僕の力じゃ完全には抑えきれない。首筋まで赤くしている美鶴が肘を入れてこようとするのに焦って「うわっ、暴力反対!」と言えば、すかさず「うるさいエロガキ!」と暴言が返る。ちょっと、同い年でしょ、僕ら。動転してるらしい美鶴は僕の方が数ヶ月早く生まれてるってことも失念してるらしい。そりゃぁ、ぱっと見は僕の方が童顔だし、まだ背だって低いんだけど、誕生日は変えられないでしょ。
「わからずや!」
後ろから抱き込む形になってたことに助けられた。寝返りを打たれる前に後ろからのしかかって肘を固めると、一気に抵抗が弱くなる。綺麗な唇が悔しそうに「放せバカ!」とさらなる暴言を吐くのに、「やだ」と笑い返す。
「だって、今放したら帰っちゃうでしょ」
当たり前だと小憎らしく言い放つ唇でさえ、あの鼓動をもらった後では蜜を含んだ果実のようだった。
「ごめんね、美鶴。でも、帰らないでよ」
素直にこちらから謝ると、美鶴の抵抗が鈍る。妹であるアヤちゃんを大切にしているお兄ちゃんな美鶴は、こんなふうに先に折れられると弱いのだ。むくれたように眉を寄せた顔が伏せられてしまい、顔がよく見えなくなってしまった。…あれ、まずい。本気で怒らせてしまっただろうか。
「痛い、放せ」
ぼそりと呟かれて、そんなに強く抑えてしまっていたのかと僕はうろたえて「えっ、わっ、ごめん!」と焦った声をあげて肘から手を離した。見ると、抑えていた肘のあたりに赤く手の跡がついている。正直な鼓動が嬉しくて、その嬉しさのあまり少し調子に乗り過ぎてしまったようだ。美鶴の肌は色素が薄いし、肌自体も薄くて跡が残りやすいのを忘れていた。
痛い思いをさせてしまったことに罪悪感が押し寄せて、「ごめんね、美鶴」と赤くなった部分を摩る。なお伏せられたままの顔に焦って、摩りながら何度も謝罪の言葉を繰り返すと、もぞっと細い体を丸めて「…さむい」と呟く声がした。
「わああ、ごめん!」
美鶴は極端な寒がりなのだ。それに、真夏の炎天下でもない限り、誰だって汗ばんだ素肌のままでいればすぐに体温を奪われる。二人で暴れてしまって脇に寄ってしまっていた掛け布団ごと美鶴に被さると、合わせた肌がひんやりとしていていたたまれない。小さく震えている体を少しでも早く暖めようとぎゅっと抱き込んだ。
布団を被って体温を逃げないようにして、懸命に美鶴の肩や腕を摩る。胸に密着した背中がゆっくりと暖まってきても、美鶴の細い体はまだ小刻みに震えたままで。ちょっとした悪戯心のつもりだったのに、このままでは本当に風邪を引かせてしまうのではないかと本気で不安になる。
「まだ寒い?」
「…まだ…」
ぽつりと返る返事が、うわずったような調子なのに気づいて、思わず手が止まる。
「…み、みつる…?」
「………」
問いかけには返事はなく、白い首筋も肩もまだ震えが止まってない。「…ま、だ…」ときゅっと身を縮めるような仕草をされて、慌ててさらに細い体を擦った。
「本当にごめんね、そんなに寒い? ねぇ、お風呂いれようか? それとも──」
必死に暖めようとする僕のしたで、しかし、美鶴の様子はなんだか少しおかしかった。
「…ぷ…、くくっ……も、だめ…!」
縮こまってかたかたと小刻みに震えていたはずの体が、いっきに解ける。
「えっ…」
驚いてゆるめた腕の中で美鶴は、今度こそ本格的に体を震わせて──笑っていた。
「ええええっ、ちょ、ひどっ、酷いよみつる!」
寒さで震えていたのではなく、笑う声を押し殺そうとして震えていたのだ。騙されていたことにやっと気づいて、僕は一気に機嫌を下降させてしまった。
「なんだよ、僕、本気で心配してたのに…!」
俯せた肩を掴んで少々乱暴に仰向かせる。驚いたように「あ、」とあがる声も、その時は悔しさでいつもほど可愛いとは思えなかったのだけれど。
「騙すなんてひどいよ」
仰向かせた美鶴は、あからさまに機嫌を損ねた僕に、さすがに笑いを引っ込めた。
けれどその表情は、驚きや謝罪というよりは、むしろ拗ねたようなものに変化した。
「…だったら、不意打ちはひどくないのか?」
「え?」
意味を捉えかねた僕の下で、ぷい、と白い顔が横を向く。
「…お前だって、わざと不意打ちしただろ…」
そういわれて、やっと、美鶴が言っている意味が分かった。最初に僕が仕掛けた悪戯のことを言っているのだ。
「そ、それは」
確かにあれは、美鶴が半分眠っているのを狙っていた。でも、そうでもないと、意地っ張りな美鶴は絶対に本心を言ってはくれないだろうことも確かなはずで。僕が美鶴から甘い言葉を囁かれることなどほとんどなく、正直そういった睦言めいたやり取りを思い描いたことだって少なくない。…虚しくなるからあまりやらないようにしてるけど。
「あ…れは、美鶴が…僕のことやらしいってからかうようなこというから…」
確かにちょっと悪かったような気はしたけれど、美鶴の鼓動をうれしいと思う気持ちをからかわれたことは、少なからずショックだった。
「僕には、美鶴の心臓の音が、すっごい大事なのに…!」
それまで横を向いていた美鶴が、驚いたように僕を見上げる。
「…うれしいって、そういう意味だったのか…?」
今度拗ねたようにそっぽを向くのは僕の番だった。意外だというのが滲んだ美鶴の声こそ心外だった。それがいつもどこかで自分の存在価値を酷く軽く考えてしまうせいだとしても、抱き合って熱を交わしたあとでさえ美鶴はどれだけ僕が美鶴を好きか、決して心底理解しようとはしてくれない。そのことが無性に寂しかった。
「………わたる」
指先が頬を撫でた。
とたんに心がざわついてしまうけれど、それではあまりに情けない気がして、僕はそのまま顔を背けたままでいた。
「……わたる」
けれど、反対側の手も添えられ、そっと力がこめられて、美鶴の方を向かされることには逆らえなかった。その手の感触は、あまりにも運命の塔の上で触れて来たときのものに似ていたから。けれど、視線はまだ合わせられなかった。
「わたる、…ごめん」
あまりに真摯な声色に、それ以上は耐えきれず美鶴の顔を見る。
「ごめん」
その表情は、あのとき、運命の塔で「お人好しだな」といった時と同じものだった。初めて美鶴が僕を名前で呼んだ、あの時。
「ごめん…」
何度も重ねたしっとりと柔らかな唇がかすかに震えながら謝罪の言葉を紡ぐのを見てしまうと、それ以上我慢できなかった。
「──もういい美鶴、僕こそ、ごめん」
離していた半身を重ねると、そこは暖める前のようにまた冷えてしまっていた。唇の震えは本物だった。──きっと、さっきも。
僕が好きなのは、僕に都合のいい芦川美鶴の一部なんかじゃない。最初から最後までまるごと全部、美鶴を全部欲しかったはずだ。美鶴は意地っ張りでわからずやで時々うそつきだけれど、確かに時々、そんなところに腹が立ったりするけれど──どこが欠けたって芦川美鶴でなくなってしまう。なら僕は、彼の可愛いく思えるところだけでなく、この複雑で難解なところも受け止められるはずだ。喧嘩したってそれで終わらせたりせずに、ひとつづつ、ちゃんとふたりで。
僕は美鶴の真正面にいて、生まれたまんまの美鶴を抱きしめることができるんだから。
その僕の思考を受けるかのように、美鶴の腕が僕の首に回される。誘われるように唇を合わせ深く貪ると、美鶴が鼻にかかったようなくぐもった声を漏らした。その声に背筋をぞくりと刺激され、互いに息の上がるまでそれは途切れなかった。
くちゅ、と湿った音とともに名残惜しく唇を放す。頬を上気させてとろりとした目つきの美鶴はたいそう艶かしくて、まるで誘っているようなその表情にたまらなくそそられる。どくん、と自分の鼓動が跳ねるのを聞いて、結局誰でも鼓動は正直なんだなと人ごとのように考えた。身内に湧き上がってくる衝動をごまかすことはできそうにない。
「あのさ…ぼくがやらしいって、いうのは、謝らなくていいから」
「…な、に…?」
深いキスの気持ちよさでぼうっとなっている美鶴は、浅い呼吸をしながら問い返してくる。そのまま、こく、と口腔にたまったすい液を飲み込む仕草は今の僕の眼にはとんでもなくやらしくて、くらっと目眩を誘われて参った。
「…だって、美鶴が好きだから…今も、美鶴に、いっぱい…やらしいことしたい、し」
絡んだ足の内腿あたりに、すりっと下肢を擦り付けると、
「わ、わた…」
その感触が意味するところを理解した美鶴の眼が軽く瞠目した。
「だから、やらしいのは、本当のこと、だもん」
滑らかな腿にすりつけた僕のものは、もうすっかり堅く立ち上がって、先走りの液が溢れていた。まるでそれを美鶴の腿に塗り付けるように、勝手に腰が動く。
「ね、みつる…したい…もっかい、いれていい…?」
美鶴の色香には勝てないことにとっくに開き直ってしまった僕は、高ぶったものを押し当てられて首筋まで真っ赤にする美鶴に今にもがっついてしまいそうで、それでも必死に自制していた。すぐにでも美鶴を思うままに揺さぶりたかったけれど、でも、今ばかりは無理には入れたくなかったのだ。
「……、」
上気した顔を僕の胸に伏せてしまっていた美鶴が、何事かを呟いたけれど、それはあまりに小さくて上手く聞き取れない。
「みつる…?」
体をかがめて耳元で名を呼ぶと、びく、と全身が震え、真っ赤になった顔が怒ったような涙眼で睨んで来た。
「…こっの、鈍感…!」
そう叫んだ声は、どこか泣き声のように潤んでいて、むしろ僕の自制を責めているかのようで。
「俺にやらしいことしたいなら、いつもみたく、すればいいだろ…!」
うわ、なにそれ…!
普段の意地っ張りさ加減を知っているだけに、美鶴がどれだけ羞恥を堪えているのか判ってしまった。素直な時だって最高に可愛いのに、可愛くない態度がこんなに可愛いなんて、ある意味最凶で最悪だ。ただしそれは僕にとっては最高って意味でしかない。
「…うん、したい、する。いっぱいする」
赤面して涙眼の美鶴の口からすればいいだろなんて言われたら、もう自制なんてかけらも残らなかった。
僕よりまだ少し背の高い体だけれど、細さは美鶴の方が少し細くて、膝を割ってその膝裏を抱えてしまうと衝撃に備えるように細い腕がしがみついてきた。そのまま指で美鶴の蕾を探ると、数時間前にも交わったそこはまだ十分に柔らかく湿っていて、指はすぐに奥へと飲み込まれる。二本に増やした指をぐりっと動かせば、
「うく…、ぅ、んっ」
美鶴の切羽詰まったような息づかいがして、きゅうっと襞が締め上げた。まるで僕のものを早く入れろと言われたような過敏な動きに、思わず喉が鳴る。入り口を指で軽く広げるようにした蕾に
「いれる、よ」
くち、と先走りで濡れる先端をあてがうと、美鶴は無意識に首をすくめ。
「み、つるっ」
「──ん、んぁ、ひぁ…!」
ほんの少しの抵抗はあってもそれは最初の一瞬だけで、組みしいた内腿が痙攣するように震え、熱く収縮するそこは、先走りの液をたらす猛りきった僕の欲望を根元まで深々と飲み込んだ。
「う、あっ…すご…みつるの、なかっ…びくびくって…」
美鶴の耳元でそういったのは、自分でもわざとなのか無意識だったのかわからない。
「や…っ、バカっ! そ、なこと…いう、なぁっ…!」
でも、それは美鶴にはとんでもなく恥ずかしいことだったらしく、しがみついてた手が拳を作って僕の頭や背中を叩く。けれどそれは腰を使って美鶴を揺すり上げだした途端にろくに力をなくし、幾度か深く突き上げると結局もとの位置でしがみつく動作に戻った。
粘膜と体液が立てるぐちゅぐちゅといやらしい音がベッドの軋む音に共鳴する。
「やっ、あっ、ああっ、わた、るぅ、やぁ…っ、や、そこ…いやだ…っぁ!」
高い声が上がる場所をわざと繰り返して突くと、刺激が強すぎるのか、足がばたついて泣き声にちかい悲鳴が上がる。
「だめ、いっぱい、するって、いったで、しょ…!」
美鶴の反応がいい場所を懸命に突きながら、互いの腹に擦られて半ば立ち上がっている美鶴のものを探る。
「ひ、だめ、ぇ…っ!」
「覚悟して、ね、みつる」
まだ否定の言葉が混じる声がやがてほどけるその先を、僕は目指す。
手のひらを白い胸に添わせれば、その左胸に、徐々にうす桃色にうかぶものがある。
それは、幻界で美鶴が彼のダブルの胸を杖で突き刺した位置にあった。
「みつ、る」
それは、美鶴の体温が急激に上がった時にだけ肌に浮かび上がる、痣だった。僕は美鶴と肌を合わせるようになって、その痣のことを知った。ほとんど消えかけた傷跡が上気した時だけ目立つのと似ていて普段はまったく肌には現れないが、今ならきっと、背中のちょうど反対側にも同じような痣が浮き出ているはずだ。あの時の美鶴はダブルを倒せば勝てると信じていたし、目指す女神の元へはあと一歩で、自分と同じ姿を持つものに切っ先を突き立てるとしても、その瞳にはかけらほどの躊躇もなかった。
うすい痣となって浮き上がるだけの今でさえ、そこにあった傷の酷さは生々しく想像できてしまう。
美鶴が生きてここにいることは、僕にとって紛れもなく奇跡だった。
──奇跡であり、未来だった。
「や…っ、ぁ、あ、ああっ、ひ…っ、ひぁ…!」
美鶴の声が、だんだんと意味をなさない音の羅列になる。子供のように無防備にほどけていく声と体。美鶴自身はしらない、やらしい美鶴。ううん、違う。僕以外の誰も知らない美鶴だ。反らされた喉も、上気して桃のように染まる肌も、潤み切って行き場をなくしたような目線も、全部が僕だけの美鶴。
「あ、わ、わた、はぁっ、あああ!」
普段は誰より理性的で氷でできた王子様みたいなのに、快楽に撃ち墜とされて喘ぐ美鶴は綺麗で、やらしくて、可愛い。
…僕が、そうさせてる。
「──すき、だよ、みつるっ」
君の鼓動を受け止める手のひらに、いつもより早くて高いトーンが響く。
何よりもいとおしい鼓動が。
「…だいすき、だよ」
僕の言葉に応えるように打ち続ける。
you wish ? -- ...retuern brave
あ、あれぇ…???
おかしい、なんでエロ部分が最初の3倍になってんだ???
てか、最初から最後までエロですか!?いったい誰がこんなことを!!(本気で)
えーと、最初はちょっとしたエロつきのほのぼののつもりだったんですけどー、最初は確かにそのテンションで始まってると思うんですけどー、なんか途中から変なシリアスっぽい路線が入って、しかもなんでか最後の方リリカル路線になってませんか、ね?(もはや誰に問うているのか)
最初書こうと思ってたのは中学生の回想シーンで、すっかり互いにえっちも馴染んだ頃に。わたやんが初々しかった頃(…そうか?)をふと思い出す、という話だったはずなのに、どこでどうなってこうなったのやら。
最後までしたのが5〜6回目ということは、これは時期的には2月の終わりか3月の初めくらいじゃないかなぁ。え、小6に見えませんかね?セリフとかちょっと子供っぽくしたつもりなんですが。
えと、ウチの子たちは私の脳内では小6の冬の終わりに最後の一線超えてまつ。それまではドライでスから。(さらりというな)
なので、一線超える前にもそこそこ経験値あるってことでよろしくです。
ええ、それでも無理?どう譲歩しても中学生でしょうか、そりゃすいません、でも小6なんですヨー、どんだけえっち好きなんだこのエロかわなガキんちょたちめ!(今ワタミツに責任なすりつけたよこの人…)
もともとクリスマスわたみつにできなくて年末年始ワタミツにもできなかったので、これをすでにどういえばいいのか私にも判りません(笑)
あ、タイトルはガチですよー。ウチの亘さんは、えっちの前後も最中も、みったんの胸をなで回すのが好きで仕方ない人なんでス。
…なんかフェチっぽいな(笑)(お前がいうか!)
ginto-bunko